直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、制度の見直しが行われ、その適用期限も延長されました。
(1)非課税限度額の見直しが行われました
契約時期 | 消費税率10%が適用される者 | 消費税率8%が適用される者 個人間売買により中古住宅取得した者 |
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良質な 住宅用家屋 | 一般家屋 (左記以外) |
良質な 住宅用家屋 | 一般家屋 (左記以外) |
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〜平成27年 | **** | **** | 1500万円 | 1000万円 |
平成28年1月 〜28年9月 | **** | **** | 1200万円 | 700万円 |
平成28年10月 〜29年9月 | 3000万円 | 2500万円 | 1200万円 | 700万円 |
平成29年10月 〜30年9月 | 1500万円 | 1000万円 | 1000万円 | 500万円 |
平成30年10月 〜31年6月 | 1200万円 | 700万円 | 800万円 | 300万円 |
上記のように 消費税率が10%が適用される住宅購入者に対して大幅な非課税枠の拡充が図られ、住宅需要の喚起を図っています。
(2)良質な住宅用家屋の範囲拡充されました
- 【拡充前】
- ア)省エネルギー性の高い住宅(省エネルギー対策等級4)
- イ)耐震性の高い住宅(耐震等級2以上又は免震建築物)
- のいずれかの性能を満たす住宅
- 【拡充後】
- ア)省エネルギー性の高い住宅(省エネルギー対策等級4又は一次エネルギー消費量等級4)
- イ)耐震性の高い住宅(耐震等級2以上又は免震建築物)
- ウ)バリアフリー性の高い住宅(高齢者等配慮対策等級3以上)
- のいずれかの性能を満たす住宅
(3)適用期限の延長
上記の改正は、平成27年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金にかかる贈与税について適用されます。
子や孫への結婚・妊娠・出産・育児を支援するための贈与税の非課税措置が創設されました。
(1)制度の内容
最大1000万円まで贈与税が非課税になります。制度の概要は次の通りです。
項目 | 適用条件・内容等 |
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ア)贈与者 | 受贈者の直系尊属 |
イ)受贈者 | 20歳以上50歳未満の者(子・孫・ひ孫等) |
ウ)拠出方法 | 贈与者が金銭等を拠出し、金融機関(信託会社・信託銀行・銀行・金融商品取引業者等)に信託等をして資金管理契約を締結 |
エ)非課税限度額 | 金銭等1000万円まで(うち結婚費用は300万円を限度) |
オ)期間 | 平成27年4月1日から平成31年3月31日までの拠出 |
カ)申告 | 金融機関を通じて非課税申告書を提出 |
(2)結婚・子育て資金の範囲
- 結婚・子育て資金の範囲は次のとおりです。
- ア)結婚に際して支出する婚礼(結婚披露を含む)に要する費用、住居に要する費用及び引越に
- 要する費用のうち一定のもの
- イ)妊娠に要する費用、出産に要する費用、子や孫などの医療費及び保育料のうち一定のもの
(3)結婚・子育て資金管理契約の終了
次に掲げる事由に該当した場合には、結婚・子育て資金管理契約は終了します。
- ア)受贈者が50歳に達した場合
- イ)受贈者が死亡した場合
- ウ)信託財産等の価額が零となった場合において終了の合意があったとき
(4)残額がある場合の取り扱い
- ア)受贈者が50歳に達した場合、または信託財産等の価額が零となった場合において
- 終了の合意があったとき
結婚・子育て資金管理契約が終了
↓
非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した管理残額
↓
管理残額の贈与があったものとして受贈者に贈与税が課税されます
イ)受贈者が死亡した場合
結婚・子育て資金管理契約が終了
↓
非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した管理残額
↓
管理残額に贈与税は課されません
(5)期間中に贈与者が死亡した場合
信託等があった日から結婚・子育て資金管理契約の終了の日までの間に、贈与者が死亡した場合には下記の取り扱いになります。
その死亡の日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した管理残額
↓
受贈者が贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなして、
その贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算
(6)適用の注意点
- ア)管理残額に対応する相続税額については相続税額の2割加算の対象となりません。
- イ)先行して導入された教育資金の一括贈与制度は、贈与者が死亡した場合でも
- 残額は相続税の課税価格に加算されません。
しかし、この結婚・子育て資金の一括贈与については、相続開始直前の駆け込み的な贈与など租税回避を助長させる恐れも予想されるため、贈与者死亡時の管理残額が相続税の課税価格に加算される点が大きな違いとなっています。
(7)適用期間
平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に拠出される結婚・子育て資金に限り適用されます。
平成25年4月にスタートした、直系尊属からの教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置について、一定の見直しを行ったうえで、その適用期限が平成31年3月31日まで延長されました。
(1)概要
項目 | 適用条件・内容等 |
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ア)贈与者 | 受贈者の直系尊属 |
イ)受贈者 | 30歳未満の直系卑属(子・孫・ひ孫等) |
ウ)非課税限度額 | 金銭等1500万円まで(うち学校等以外は500万円を限度) |
エ)教育資金 | ・学校等に支払われる入学金その他の金銭 ・学校以外の者に支払われる金銭のうち一定のもの |
オ)申告 | 金融機関を通じて非課税申告書を提出 |
カ)拠出確認 | 払いだした金銭を教育資金の支払いに充当したことを証する書類を金融機関に提出 ↓ 金融機関は上記の確認をし、記録し、書類等を受贈者が30歳に達した日の翌年3月15日後6年を経過する日まで保存 |
(2)改正内容
- ア)使途の範囲拡充
- 特例の対象となる教育資金の使途の範囲に、通学定期券代、留学渡航費等が加えられます。
- イ)金融機関への領収書等の提出
- 領収書等に記載された支払額が1万円以下で、かつ、その年中における合計支払い金額が24万円に達するまでのものについては、領収書等に代えて支払先、支払金額等の明細を記載した書類を提出することが可能となります。
- ウ)適用時期
- 上記のイ)の改正は、平成28年1月1日以後に提出する書類について適用されます。
経営者の高齢化が進む中、中小企業の事業承継の、より一層の円滑化を図るため、2代目から3段目に承継する場合に、贈与税の納税義務が生じないようにするなどの拡充が図られました。
(1)概要
経営贈与承継期間(贈与税の申告期限から5年間)後、1代目経営者が存命中に、受贈者である2代目経営者が後継者である3代目へ特例受贈非上場株式等を贈与した場合に、3代目が贈与税の納税猶予を受けるときは、その適用を受ける株式等に係る2代目の贈与税の納税猶予額が免除されます。
また、経営贈与承継期間内で、1代目経営者が存命中に、受贈者である2代目経営者が後継者である3代目へ特例受贈非上場株式等を贈与した場合において、3代目が贈与税の納税猶予を受けるときはその適用を受ける株式等に係る2代目の贈与税の納税猶予額が免除されます。